世界中の養蜂家に向けて、蜂群を成功裏に捕獲するための分蜂トラップの作り方と設置方法を解説する包括的ガイドです。
効果的な分蜂トラップの構築:世界の養蜂家のためのガイド
分蜂はミツバチにとって自然なプロセスであり、コロニー(蜂群)の一部が元の巣を離れて新しいコロニーを確立する、コロニーの繁殖方法です。これは健全なコロニーの証である一方、既存の養蜂場と蜂蜜生産を維持したい養蜂家にとっては問題となることがあります。幸いなことに、養蜂家は分蜂トラップを利用してこれらの分蜂群を捕獲し、管理された環境を提供して蜂の損失を防ぐことができます。このガイドでは、世界中の養蜂家に応用可能な分蜂トラップの構築と設置に関する包括的な概要を提供します。
分蜂行動の理解
分蜂トラップを構築する前に、なぜ蜂が分蜂するのかを理解することが重要です。分蜂は通常、巣内の過密、女王蜂の年齢や健康状態、または資源不足によって引き起こされます。これらの要因を理解することで、養蜂家は分蜂シーズンを予測できます。分蜂シーズンは気候や場所によって異なります。温帯地域では通常、春から初夏にかけて分蜂が起こりますが、温暖な気候では年に複数回発生することがあります。王台(枠の下部や側面に沿って作られる女王蜂のセル)の存在や働き蜂の活動低下など、差し迫った分蜂の兆候を認識することは、効果的な分蜂捕獲に不可欠です。
分蜂トラップに不可欠な特性
成功する分蜂トラップには、いくつかの重要な特性があります。
- 容量:理想的な容量は一般的に30〜40リットル(約8〜10ガロン)です。このサイズは、分蜂群が過密を感じることなく定着するのに十分なスペースを提供します。小さなトラップは大きな分蜂群を敬遠させる可能性があり、大きなトラップは魅力が薄れることがあります。
- 入り口のサイズ:約12〜15平方センチメートル(2〜2.5平方インチ)の小さな入り口で十分です。大きな入り口は、トラップを捕食者に対して脆弱にし、偵察蜂にとって魅力が薄れます。
- 暗さ:蜂は暗く閉鎖された空間を好みます。トラップの内部は、自然の空洞を模倣するために比較的暗くする必要があります。
- 換気:結露やカビの発生を防ぐために適切な換気が不可欠です。これらはトラップを住めなくする可能性があります。スクリーンメッシュで覆われた小さな換気穴を、トラップの上部近くに配置する必要があります。
- アクセスしやすさ:トラップは、捕獲した分蜂群の点検と取り出しのために簡単にアクセスできる必要があります。取り外し可能な蓋や側面パネルがあると、このプロセスが簡単になります。
- 設置場所:分蜂トラップの場所は成功にとって非常に重要です。トラップは、直射日光や強風を避け、理想的には南東を向いた保護された場所に設置する必要があります。自然の樹洞の高さを模倣するため、地面から少なくとも3メートル(10フィート)の高さに設置する必要があります。
分蜂トラップの製作材料
分蜂トラップは、入手可能性や予算に応じてさまざまな材料で製作できます。一般的な選択肢は次のとおりです。
- 合板:合板は耐久性があり、すぐに入手できる材料です。耐候性のために屋外用の合板を使用してください。
- OSB(配向性ストランドボード):OSBは合板よりも安価な代替品ですが、湿気に対する耐性が低いです。OSBを使用する場合は、塗料やニスで適切に密閉してください。
- 段ボール:段ボール箱は一時的な分蜂トラップとして使用できますが、木材ほど耐久性はありません。段ボールが厚くて丈夫であることを確認し、雨から保護してください。
- プラスチック:大きな収納箱などのプラスチック容器を分蜂トラップに改造できます。プラスチックが食品グレードで不透明であることを確認してください。
- 古い巣箱:数枚の巣枠が入った古い使用不能な巣箱は、優れた分蜂トラップになります。
主要な材料に加えて、以下のものも必要になります。
- ネジまたは釘:トラップの組み立て用。
- 木工用接着剤:強度と耐候性を高めるため。
- 塗料またはニス:トラップの外側を風雨から保護するため。太陽光を反射し、過熱を防ぐために明るい色の塗料を使用してください。
- スクリーンメッシュ:換気穴を覆うため。
- 巣枠:古い巣脾枠は蜜蝋とプロポリスの香りが含まれているため、分蜂群にとって最も魅力的です。空の巣枠や巣礎付きの巣枠も使用できます。
- 分蜂誘引剤:レモングラスオイルや市販の分蜂誘引剤などの誘引剤は、分蜂群を引き寄せる可能性を大幅に高めることができます。
分蜂トラップの段階的製作ガイド
基本的な合板製分蜂トラップを製作するための段階的なガイドは次のとおりです。
- 合板の切断:希望するトラップの容量に基づいて、合板を次の寸法に切断します(必要に応じて調整):
- 天板:30cm x 30cm (12" x 12")
- 底板:30cm x 30cm (12" x 12")
- 側面(2枚):30cm x 40cm (12" x 16")
- 前面:30cm x 40cm (12" x 16")
- 背面:30cm x 40cm (12" x 16")
- 箱の組み立て:木工用接着剤とネジまたは釘を使用して箱を組み立てます。継ぎ目がきつく、箱が直角であることを確認してください。
- 入り口の穴あけ:箱の前面に直径約5cm(2インチ)の穴を開けます。
- 換気穴の追加:側面と背面の箱の上部近くに、いくつかの小さな穴(約1cmまたは0.4インチ)を開けます。他の昆虫の侵入を防ぐために、穴をスクリーンメッシュで覆います。
- 巣枠サポートの作成:箱の内側に木製の桟を取り付けて巣枠を支えます。桟が水平で、巣枠を収容するために適切に間隔が空いていることを確認してください。
- 外側の塗装またはニス塗り:箱の外側を風雨から保護するために塗装またはニスを塗ります。太陽光を反射するために明るい色の塗料を使用してください。
- 巣枠と分蜂誘引剤の追加:トラップ内に数枚の古い巣脾枠を置きます。分蜂誘引剤を使用する場合は、綿球や小さな布に付けてトラップの中に入れます。
- 蓋の取り付け:箱の上にぴったりと合う蓋を製作します。蓋は点検や分蜂群の取り出しのために簡単に取り外せるようにする必要があります。蓋をネジやラッチで固定します。
代替の分蜂トラップ設計
基本的な合板製の箱は一般的な設計ですが、多くのバリエーションがあります。中空の丸太を模倣した長くて狭いトラップを好む養蜂家もいれば、5ガロンのバケツやプラスチック製の収納箱など、再利用した容器を使用する人もいます。重要なのは、成功する分蜂トラップの基本的な特性(適切な容量、小さな入り口、暗さ、換気)を維持することです。
例:タンザニア式トップバー巣箱の分蜂トラップ:タンザニアなどの一部の地域では、養蜂家は地元の巣箱の設計を分蜂捕獲用に適応させます。蜜蝋とプロポリスで餌付けされた小型で持ち運び可能なトップバー巣箱は、このタイプの巣箱に慣れている分蜂群を引き付けるのに非常に効果的です。これは、分蜂トラップの設計を地元の蜂の個体群や養蜂慣行に合わせて調整できることを示しています。
分蜂トラップの効果的な設置
適切な配置は、分蜂群を引き付けるために非常に重要です。次の要因を考慮してください。
- 高さ:トラップを地面から少なくとも3メートル(10フィート)の高さに設置します。分蜂群は高くて人目につかない場所を好む傾向があります。
- 場所:トラップを直射日光や強風を避けた保護された場所に置きます。林地や畑の端などが良い選択肢となることが多いです。
- 向き:トラップの入り口を南東に向けます。この向きにすると、トラップが朝の日差しを受けることができ、偵察蜂を引き付ける可能性があります。
- 既存の巣箱との近接性:トラップを既存の巣箱から適度な距離に置きますが、近すぎないようにします。通常、50〜100メートル(160〜330フィート)の距離が推奨されます。
- アクセスしやすさ:捕獲した分蜂群の点検と取り出しのために、トラップに簡単にアクセスできることを確認してください。
分蜂誘引剤と誘引物質
分蜂誘引剤は、分蜂群を引き付ける可能性を大幅に高めることができます。いくつかの選択肢があります。
- レモングラスオイル:レモングラスオイルには、蜂が他の蜂をある場所に引き付けるために放出するフェロモンであるナソノフ腺フェロモンの香りを模倣する化合物、シトラールが含まれています。レモングラスオイルを水またはアルコールで希釈し、数滴を綿球や小さな布に付けてトラップの中に入れます。
- 市販の分蜂誘引剤:フェロモンやその他の誘引物質の混合物を含む、いくつかの市販の分蜂誘引剤が利用可能です。使用方法については製造元の指示に従ってください。
- 古い巣脾:古い巣脾には蜜蝋とプロポリスの香りが含まれており、蜂にとって非常に魅力的です。トラップ内に数枚の古い巣脾枠を置くことで、その魅力を大幅に高めることができます。
- プロポリス:プロポリスは、蜂が木から集めて巣のひび割れや隙間を塞ぐために使用する樹脂状の物質です。トラップ内に少量のプロポリスを置くことも、分蜂群にとって魅力的です。
分蜂トラップの監視と管理
特に分蜂シーズン中は、定期的に分蜂トラップを監視してください。1〜2週間ごとにトラップをチェックして、入居しているかどうかを確認します。蜂がトラップに出入りするなどの活動の兆候を探します。トラップに分蜂群を見つけたら、次の手順を実行します。
- 夕暮れまで待つ:すべての蜂がトラップに戻る夕暮れまで待ちます。
- 入り口を閉じる:蜂が逃げるのを防ぐために、トラップの入り口を閉じます。スクリーンメッシュやフォームプラグを使用できます。
- トラップを移動する:慎重にトラップを養蜂場に移動します。新しいコロニーを確立したい場所にトラップを置きます。
- 分蜂群を移す:翌朝、トラップの入り口を開けます。蜂は徐々にトラップを離れて新しい巣箱に入ります。あるいは、分蜂トラップから巣枠を直接標準の巣箱に移すこともできます。
- コロニーを監視する:新しいコロニーが繁栄していることを確認するために監視します。必要に応じて、コロニーに砂糖水や花粉パテを与えます。
分蜂トラップが失敗した場合のトラブルシューティング
最善の準備をしても、分蜂トラップが常に成功するとは限りません。失敗の一般的な理由は次のとおりです。
- 不適切な場所:トラップが適切な場所にありません。トラップを別の場所に移動してみてください。
- 魅力のないトラップ:トラップが分蜂群にとって魅力的ではありません。分蜂誘引剤や古い巣脾を追加してみてください。
- 捕食者の存在:アリやスモールハイブビートルなどの捕食者が分蜂群を妨げています。トラップの周りの捕食者を制御する対策を講じます。
- 競合する分蜂トラップ:その地域に分蜂トラップが多すぎます。トラップの数を減らすか、さらに離して設置します。
法的考慮事項
分蜂トラップを設置する前に、養蜂と分蜂捕獲に関する地域の規制や条例を認識してください。一部の地域では許可が必要な場合があります。常に他人の財産権を尊重し、私有地に分蜂トラップを設置する前に許可を得てください。
例:ヨーロッパの規制:欧州連合では、養蜂家は蜂の健康と病気の管理に関する特定の規制を遵守する必要があります。蜂の病気の蔓延を防ぐために、分蜂捕獲の実践がこれらの規制に準拠していることを確認してください。
結論
効果的な分蜂トラップを構築し設置することは、世界中の養蜂家にとって価値のあるスキルです。分蜂行動を理解し、不可欠な特性を持つトラップを構築し、戦略的に配置することで、養蜂家は分蜂群を捕獲し、養蜂場を拡大し、蜂の個体群の健康と幸福に貢献することができます。地元の環境や規制に合わせて実践を調整し、分蜂捕獲技術を継続的に学び、洗練させることを忘れないでください。